WORKS / チェルフィッチュ「フリータイム」
主要用途: 舞台美術
施工: 東京スタデオ
所在・会場: スーパー・デラックス
延床面積: 47.6m2
設計期間: 2007.11-2008.03
施工期間: 2008.03
会期: 2008.03.05-18
写真: 横田徹
ウェブサイト: http://chelfitsch.net/
岡田利規主宰の演劇ユニット、チェルフィッチュの新作公演 "フリータイム"の舞台美術を手がけることになった。六本木Super Deluxe を皮切りに、世界中を巡回していくことが想定された。
新作の舞台設定はファミレス。演劇においては、表象にどれだけ近づこうとしても完全にそれと同化することはできない。舞台美術においても同様で、ファミレスを表面的に真似ても、完全に再現することはできない。また、舞台設定に束縛され過ぎると、劇団のひとつの特徴でもある演者の多彩な動作を制限してしまう。舞台美術を背景以上の存在にするため、抽象化して実現することが求められた。
地面から550mmという高さに仮想の平面を想定し、どこにでもあるファミレスのイスとテーブルのセットをその高さで切断する。切断した面から上部だけが
残って、下半分はその平面に埋もれる。高さが奪われたイスとテーブルは本来の機能を失って、その形と記号性だけが残る。演者はその上に立って床から浮いているような状態になることで、イスを引いて座ったり、テーブルで食事をとったりといった日常的な行為から開放されて、切断された家具と新しい関係を築くことができる。
舞台美術が、ファミレスという環境を表象することはもちろん、演者の動作に幅を持たせるきっかけになることを意識した。そこに立つだけで演者が床からふわふわと浮かんで演じているような浮遊感のある光景が、人称が次々と入れ替わっていく "フリータイム" の独特な世界観を印象付ける。